1959年(昭和34年)に誕生した「プリンス・スカイウェイ」は、
あのスカイラインの商用版として設定された“高級コマーシャルカー”だった。
開発元はかつての航空機メーカー、中島飛行機をルーツに持つ富士精密工業(のちのプリンス自動車)。
乗用車として高評価を得ていた初代スカイライン(ALSIS型)をベースに、実用性の高い貨物車仕様=バンタイプへと派生したのがこの「スカイウェイ」だった。
項目 | 内容 |
---|---|
エンジン | GA4型:直列4気筒 OHV・1,484cc |
出力 | 70ps / 4,800rpm |
トルク | 11.5kgm / 3,600rpm |
全長×全幅×全高 | 4,420mm × 1,680mm × 1,590mm |
ホイールベース | 2,535mm |
トレッド(前/後) | 1,340mm / 1,380mm |
車両重量 | 約1,410kg |
サスペンション(前/後) | ダブルウィッシュボーン / ド・ディオン・アクスル |
ブレーキ(前/後) | ドラム / ドラム |
タイヤサイズ | 6.00-14-6PR / 6.00-14-8PR |
ミッション | 4速フルシンクロトランスミッション(当時先進) |
スカイウェイには以下のバリエーションが存在した:
ボディデザインは乗用モデルのスカイラインと基本を共有しながらも、
後部荷室の拡張や、チューブレスタイヤ・フルシンクロミッションなど、
“商用車としては高性能かつ高品質”な内容で注目された。
スカイウェイは日本の戦後商用車において、高性能とスタイルを両立させた稀有な存在だった。
1950年代の商用車といえば、性能は控えめで質素な外観が常識だった時代に、
このモデルは**スカイラインの名を冠し、構造・快適性・信頼性すべてにおいて“乗用品質”**を目指していた。
その実力は、政府系機関や都市部の企業車両としての採用にも繋がり、
後のスカイライン商用モデル(ステーションワゴン系)へと続く系譜の基点となった。
このALVG-2型スカイウェイの現存台数は極めて少なく、日本国内にも数台のみとされている。
現車はスカイライン博物館にて展示されており、筆者も現地で撮影を行った。
この個体は、当時のオリジナルに極めて忠実な形でレストア済みであり、
ボディカラー・バンパー形状・ステアリング周辺・サスペンションアームなど、
細部に至るまで非常に貴重な“生きた資料”となっている。
プリンス・スカイウェイ(ALVG-2型)は、
スカイラインという名が“高級スポーツセダン”として知られる以前、
実用車としての技術力と信頼性を体現していたことを今に伝える1台である。
その存在は地味ではあるが、
“スカイラインというブランドがなぜ長く続いたのか”を理解する上で、
この商用バンの存在は、欠かすことのできない1ページである。